カイロプラクティックとは、脊椎や関節などの筋骨格系の障害を手技によって調整し、痛みを軽減したり、身体の機能を改善したりする治療法です。カイロプラクティックは1895年にアメリカで創始され、現在では世界保健機関(WHO)によって補完代替医療として位置づけられています1。
カイロプラクティックの特徴は、薬物や手術を用いないこと、脊椎の構造や機能に注目すること、神経系の働きを良くして自然治癒力を高めることなどです。カイロプラクティックでは、脊椎アジャストメントと呼ばれる手技を主に用いて、脊椎の歪みやずれを修正します。脊椎アジャストメントは、脊椎の動きを制限する要因であるサブラクセーションと呼ばれる状態を改善することを目的としています1。
カイロプラクティックは、腰痛や頭痛、肩こり、むち打ちなどの筋骨格系の症状や機能障害に効果があるとされています。また、疲労回復、姿勢改善、自律神経失調、内臓の機能改善、ストレスの緩和、高齢者のケアへの効果も注目されています。日常の健康管理にも利用されています。
カイロプラクティックの施術者はカイロプラクターと呼ばれます。カイロプラクターは、世界の約40か国で法的資格制度があり、医療専門職として認められています。日本では、法的資格制度がなく、民間療法として誰もが自由に開業できる状況です。そのため、施術者の技術水準や施術方法には大きな差異があります。カイロプラクティックを受ける場合は、施術者の教育や経験、資格や所属団体などを確認することが重要です
カイロプラクティックの施術方法と注意点
カイロプラクティックの施術方法は、施術者や施術院によって異なりますが、一般的には以下のような流れで行われます。
- 問診:カイロプラクターが患者の症状や健康状態、生活習慣などを聞きます。
- 検査:カイロプラクターが患者の姿勢や歩き方、脊椎や関節の動き、筋力や反射などをチェックします。
- 診断:カイロプラクターが検査の結果から患者の症状の原因や施術の目的を説明します。
- 施術:カイロプラクターが患者の脊椎や関節に対して軽い圧力や速い動きを加えてアジャストメントを行います。アジャストメントの際には、ポキッという音がすることがありますが、これは気体が関節の間で抜ける音であり、痛みを伴うものではありません。
- アドバイス:カイロプラクターが患者に施術後の注意事項や日常の運動やストレッチ、食事や睡眠などの健康管理についてアドバイスします。
カイロプラクティックの施術は、一般的には安全で副作用の少ない治療法ですが、以下のような注意点があります。
- カイロプラクティックは、医師の診断や治療に代わるものではありません。症状が重い場合や、疑わしい場合は、まず医師に相談することが必要です。
- カイロプラクティックは、骨折や脱臼、感染症や腫瘍、出血性の疾患などの場合には適応外です。また、妊娠中や高血圧、心臓病などの場合には、施術に制限がある場合があります。そのため、カイロプラクターには、自分の健康状態や既往症などを正直に伝えることが大切です。
- カイロプラクティックは、施術者の技術や経験によって効果や安全性が大きく変わります。施術者の資格や所属団体、教育や経験などを確認することが重要です。また、施術中や施術後に痛みや不快感、異常などを感じた場合は、すぐにカイロプラクターに伝えるか、医師に相談することが必要です。
カイロプラクティックは、自分の身体と向き合い、健康を取り戻すための一つの手段です。カイロプラクティックの効果や安全性を高めるためには、施術者との信頼関係やコミュニケーションが不可欠です。自分の身体や症状に合ったカイロプラクティックを選び、自分の健康に責任を持つことが大切です。!
カイロプラクティックのメリットとデメリット
カイロプラクティックには、以下のようなメリットがあります。
- 薬物や手術を用いない自然な治療法であるため、副作用や依存性の心配が少ないです。
- 脊椎や関節の歪みやずれを修正することで、痛みや不快感を軽減するだけでなく、身体のバランスや姿勢を改善し、全身の機能を向上させることができます。
- 神経系の働きを良くすることで、自然治癒力を高め、免疫力や代謝力を向上させることができます。
- ストレスや緊張を緩和し、リラックス効果や気分の向上が期待できます。
- 日常の健康管理や予防医学として利用できます。
一方、カイロプラクティックには、以下のようなデメリットもあります。
- 効果や安全性に関する科学的な根拠や統一された基準が十分に確立されていないため、施術者や施術院によって施術の質や内容に大きな差異があります。
- 施術者の技術や経験が不十分だったり、施術方法が不適切だったりすると、逆に症状を悪化させたり、重篤な合併症を引き起こしたりする可能性があります。
- 保険適用外の自費診療であるため、費用が高くなる場合があります。また、施術の回数や期間が長くなる場合があります。
- 症状や原因によっては、カイロプラクティックだけでは効果が得られない場合があります。その場合は、医師や他の専門家との連携や併用が必要になる場合があります。
カイロプラクティックは、メリットもデメリットもあります。自分の症状や目的に合わせて、カイロプラクティックの利用を検討する際には、施術者や施術院の信頼性や評判、施術の方法や内容、費用や期間などをよく確認することが大切です。!
記事の続きを書きます。
カイロプラクティックの歴史と現状
カイロプラクティックの歴史は、1895年にアメリカのアイオワ州で起こった出来事に始まります。そのとき、聴覚障害のある男性が、ダニエル・デビッド・パーマーという自然療法家に脊椎を調整してもらったところ、聴力が回復したという奇跡が起こりました。パーマーは、この経験から、脊椎の歪みやずれが神経系に影響を与え、様々な病気や障害の原因になるという仮説を立てました。そして、脊椎の調整によって神経系の働きを正常化し、自然治癒力を高めるという治療法を開発しました。この治療法をカイロプラクティックと名付けたのは、パーマーの友人であるレヴィ・ヒューイットです。カイロプラクティックという言葉は、ギリシャ語で「手で行う」という意味の「カイロス」と「実践する」という意味の「プラクティック」から作られました。
パーマーは、カイロプラクティックの理論と技術を広めるために、1897年に世界初のカイロプラクティック学校を設立しました。その後、カイロプラクティックはアメリカやカナダを中心に発展し、世界各国に広まりました。現在では、世界の約40か国でカイロプラクティックは法的資格制度があり、医療専門職として認められています。また、世界保健機関(WHO)は、2005年にカイロプラクティックの基準や教育に関するガイドラインを発表し、カイロプラクティックを補完代替医療として位置づけました。
日本では、カイロプラクティックは1970年代に初めて紹介されました。しかし、日本では、カイロプラクティックは法的資格制度がなく、民間療法として誰もが自由に開業できる状況です。そのため、カイロプラクティックの施術者の技術水準や施術方法には大きな差異があります。日本では、カイロプラクティックの施術者は、一般的にカイロプラクターと呼ばれますが、これは法的な肩書きではありません。日本でカイロプラクターと名乗るには、以下のような条件があります。
- 日本カイロプラクターズ協会(JAC)や日本カイロプラクティック連盟(JCF)などの団体に所属し、その基準や倫理規定に従っていること。
- 海外のカイロプラクティック学校を卒業し、その国の資格試験に合格していること。
- 日本のカイロプラクティック学校を卒業し、日本カイロプラクティック検定協会(JCE)の検定試験に合格していること。
日本では、カイロプラクティックの普及や認知度が低く、施術者の資質や教育に関する問題も多くあります。しかし、カイロプラクティックの効果や安全性に関する研究や報告も増えてきており、カイロプラクティックの社会的な地位や信頼性を高めるための取り組みも行われています。日本では、カイロプラクティックの法的資格制度の導入や保険適用の実現が望まれています。!