カイロプラクティックの歴史と発展

カイロプラクティックは1895年にアメリカで生まれた手技療法です。その後、世界各国に広まり、法的な資格制度や教育基準が確立されました。現在、カイロプラクティックは世界保健機関によって基礎教育と安全性に関するガイドラインが策定されており、世界100か国以上で行われています12。

カイロプラクティックの創始者とその理論

カイロプラクティックの創始者はD.D.パーマーという自然療法家で、耳が聞こえない男性の背骨を調整したところ、聴力が回復したというエピソードが始まりとされています。パーマーは、脊椎や関節の歪み（サブラクセーション）が神経系の働きを妨げ、病気の原因になるという理論を提唱しました。パーマーは、手技によってサブラクセーションを取り除くことで、神経系の働きが正常化し、身体の自然治癒力が高まると主張しました34。

カイロプラクティックの普及と教育

カイロプラクティックは20世紀に入ると、アメリカだけでなく、カナダ、オーストラリア、イギリスなどの国々に広まり、法的な資格制度や教育基準が確立されました。カイロプラクティックの教育は、一般的には大学卒業後に4年間のカイロプラクティック大学で行われ、基礎科学、臨床科学、手技療法などのカリキュラムを履修します。卒業後には、国家試験や登録規制機関への登録が必要です。現在、カイロプラクティック大学は世界各地に約50校あり、世界保健機関のガイドラインに基づいて教育が行われています 。

カイロプラクティックの効果とメカニズム

カイロプラクティックの効果は、主に脊椎や関節の歪み（サブラクセーション）を取り除くことで、神経系の働きが正常化することによるものです。神経系は脳と脊髄からなる中枢神経系と、身体の各部に分布する末梢神経系からなり、身体のすべての機能をコントロールしています。脊椎や関節の歪みは、神経の伝達を妨げたり、刺激したりすることで、痛みや炎症、筋肉の緊張、関節の可動域の低下、内臓の機能障害などの症状を引き起こします。カイロプラクティックでは、手技によって脊椎や関節の歪みを調整することで、神経の圧迫や刺激を解消し、神経の伝達を正常に戻すことを目的としています。これにより、身体の自然治癒力が高まり、症状の改善や予防が期待できます 。

カイロプラクティックの適応症と禁忌症

カイロプラクティックは、腰痛、頭痛、むち打ち、肩こり、股関節や膝の痛みなど筋骨格系（運動器系）の症状や機能障害にすぐれた効果を発揮します。また、疲労回復、姿勢改善、自律神経失調、内臓の機能改善、ストレスの緩和、高齢者のケアへの効果も注目されています。日常の健康管理にも利用されています。一方、刺激を避けなければならない病気（癌、出血しやすい病気、高熱の出る病気、伝染病など）や、骨折や脱臼などの外傷性の病気はカイロプラクティックの禁忌症となります。また、妊娠中や骨粗しょう症などの場合は、施術方法や強度を調整する必要があります 。

カイロプラクティックの副作用と安全性

カイロプラクティックの施術で特徴的なアジャストメント（脊椎マニピュレーション）でよくみられる副作用（有害事象）として一時的な痛みの増加や筋肉の凝りなどがあります。これらは通常、数日以内に自然に消失します。重篤な合併症は非常にまれですが、脊椎動脈解離や脳卒中などの報告もあります。カイロプラクティックの安全性は、施術者の教育や技術、施術院の衛生管理や設備、患者の病歴や症状などによって影響されます。カイロプラクティックを受ける際には、施術者の資格や経験、施術方法や内容、副作用やリスクなどを事前に確認し、信頼できる施術者や施術院を選ぶことが重要です 。

カイロプラクティックの国際的な比較と課題

カイロプラクティックは世界各国で行われていますが、その地位や認知度、法的な規制や教育などには大きな差があります。カイロプラクティックの国際的な比較と課題については、以下のようになります。

カイロプラクティックの地位と認知度

カイロプラクティックの地位と認知度は、国や地域によって大きく異なります。一般的には、アメリカやカナダ、オーストラリア、イギリスなどの英語圏の国々では、カイロプラクティックは医療の一部として認められており、高い地位と認知度を持っています。これらの国々では、カイロプラクティックは国民の健康保険や公的医療制度の対象となっており、医師や他のヘルスケアプロバイダーと協働しています。また、カイロプラクティックはスポーツや軍隊などの分野でも活用されています。一方、日本や韓国、中国などのアジアの国々では、カイロプラクティックは医療として認められておらず、低い地位と認知度を持っています。これらの国々では、カイロプラクティックは健康保険や公的医療制度の対象外となっており、医師や他のヘルスケアプロバイダーとの連携も不十分です。また、カイロプラクティックは民間の手技療法と混同されやすく、業界の自主規制も不十分です。

カイロプラクティックの法的な規制と教育

カイロプラクティックの法的な規制と教育は、国や地域によって大きく異なります。一般的には、アメリカやカナダ、オーストラリア、イギリスなどの英語圏の国々では、カイロプラクティックは厳格な法的な規制と教育が行われており、高い水準を持っています。これらの国々では、カイロプラクティックは国家試験や登録規制機関によって資格が管理されており、カイロプラクティック大学で4年間の基礎教育と臨床教育を受ける必要があります。また、カイロプラクティックは世界保健機関のガイドラインに基づいて教育が行われており、研究や学会などの学術活動も盛んです。一方、日本や韓国、中国などのアジアの国々では、カイロプラクティックは緩やかな法的な規制と教育が行われており、低い水準を持っています。これらの国々では、カイロプラクティックは法的な資格制度がなく、カイロプラクティック大学も存在しません。また、カイロプラクティックは世界保健機関のガイドラインに沿っていない教育が行われており、研究や学会などの学術活動も不十分です。