側弯症に関する最新の研究成果や医療技術
側弯症とは、脊椎が三次元的にねじれて体幹に変形を来す疾患です。多くは原因が不明で、10歳以降の主に女児に発症します。重度になると手術しか治療法がなく、早期発見や予防が重要です。この記事では、側弯症に関する最新の研究成果や医療技術について紹介します。
側弯症の発症・重症化予測モデルの開発
側弯症の発症・重症化予測モデルとは、遺伝子情報や身体的特徴などから、側弯症の発症や重症化するリスクを予測する手法です。この予測モデルは、側弯症の個別化医療や予防医療に役立つと期待されています。以下に、予測モデルの開発に関する最新の研究成果を紹介します。
遺伝子多型から思春期特発性側弯症(AIS)のリスクを評価
思春期特発性側弯症(AIS)は、側弯症の中でも最も多いタイプで、遺伝的因子が関係していることが知られています。理化学研究所や慶應義塾大学などの国際共同研究グループは、日本人女性集団の遺伝子多型から、AISの発症リスクと相関する「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」を計算し、その数値を基に、AIS発症の予測モデルを開発しました1。この予測モデルにより、AISの高リスク群では、平均群と比べてAISの発症リスクが4倍であることが分かりました。
BMIや遺伝子領域を組み込んだ予測モデルの精度向上
国際共同研究グループは、さらに、BMI(肥満の指標)やAISの発症に遺伝的に関連性の深い遺伝子領域を予測モデルに組み込むことで、予測精度を向上させることに成功しました1。BMIはAIS患者では低い傾向があり、遺伝子領域はAISの原因組織や新しい感受性遺伝子座位を同定する手がかりとなります。また、同様の方法で、重症化する例の予測モデルも作成しました。重症化の高リスク群では、低リスク群に比べてAIS重症化のリスクが3.3倍であることが分かりました。
側弯症診断システムの国内販売開始
側弯症診断システムとは、画像処理技術で脊椎の変形度を測定するシステムです。このシステムは、側弯症の早期発見を実現することを目指して開発されました。以下に、側弯症診断システムの特徴や国内販売開始に関する情報を紹介します。
画像処理技術で脊椎の変形度を測定
側弯症診断システムは、背中に貼ったマーカーをカメラで撮影し、画像処理技術で脊椎の変形度を測定するシステムです1。従来の側弯症診断では、X線写真を撮影してコッブ角という指標で変形度を判定していましたが、この方法は被ばくや時間やコストがかかるという問題がありました。側弯症診断システムは、非侵襲的で迅速かつ安価に変形度を測定できるという利点があります。
学校検診や医療機関での利用が期待される
側弯症診断システムは、2020年2月に一般医療機器として国内販売が開始されました1。このシステムは、学校検診や医療機関での側弯症のスクリーニングに利用されることが期待されています。学校検診では、従来の目視や手触りによる方法よりも客観的かつ正確に変形度を判定できます。医療機関では、X線写真と併用することで、より詳細な診断や治療方針の決定に役立ちます。また、複数回の測定により、変形度の経時的な変化や治療効果の評価も可能です。
側弯症の治療法の進歩と課題
側弯症の治療法としては、手術法と非手術法があります。手術法は、脊椎を金属棒やネジなどで固定する脊椎固定術が主流ですが、リスクや後遺症もあります。非手術法は、コルセットや運動などで変形度の進行を抑える方法ですが、効果に個人差があります。以下に、側弯症の治療法の進歩と課題について紹介します。
脊椎固定術以外の手術法や非手術法の開発
脊椎固定術は、重度の側弯症に対する有効な治療法ですが、脊椎の可動性が失われることや、金属棒やネジの破損や感染などの合併症が起こる可能性があります。そこで、脊椎固定術以外の手術法や非手術法の開発が進められています。例えば、脊椎を固定せずに成長に合わせて調節できるシステムや、脊髄刺激によって筋肉のバランスを改善する方法などが研究されています。また、コルセットや運動療法についても、より効果的で快適なものを開発する試みが行われています。
個別化医療や予防医療への展望
側弯症は、遺伝的因子や身体的特徴などによって発症や重症化のリスクが異なります。そのため、個々の患者に合わせた最適な治療法を選択することが重要です。これを実現するためには、個別化医療や予防医療への取り組みが必要です。例えば、遺伝子情報や画像処理技術を用いて、発症や重症化の予測モデルを作成し23、早期発見や予防策を講じることができます。また、患者の年齢や変形度などに応じて、手術法や非手術法の中から最適な治療法を選択することができます。
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